[学名]
○バンクロフト糸状中
Wuchereria bancrofti
○回旋糸状虫
Onchocerca volvulus
○常在糸状虫
Mansonella perstans
○ロア糸状虫
Loa loa
[症状]
熱帯地域、アジア地方に生息することで知られており、リンパ管に寄生。
こうしたことから、リンパの働きを阻害することにつながる。
リンパ管が破壊されると組織液が溜まり、これが慢性刺激となると象皮病(特に、陰嚢・乳房等にでき、ヒトの頭ほどに膨れ上がる)と言われる症状が起こる。
また、寄生虫が死滅したとしても症状の改善は見られない。
特に日本においては、江戸時代に流行った。
歴史上に登場する「
西郷隆盛」を知っている方も多いことと思われる。
彼もまた象皮病患者であり、西南戦争で自決した後の鑑定で、陰嚢が膨れていたことから特定が行われた。
[説明]
バンクロフト糸状虫およびマレー糸状虫は、ヒトのリンパ組織に寄生する。
卵胎生であり、産出されたミクロフィラリア(mf)は抹消血中に出現する。
いずれも有鞘で、バンクロフト糸状虫のmfは体長240〜300μm
マレー糸状虫のそれは180〜230μmとやや小型。
‐識別の仕方‐
固定したときの体の曲がり方排泄口、生殖細胞、肛門などの距離で、両者を比較するが、最も重要なのは尾部にある2個の体細胞核の有無で、これが認められると、マレー糸状虫のmfである。
回旋糸状虫およびロア糸状虫の成虫はヒトの皮下に、
常在糸状虫はヒトの深部結合組織(腸間膜根部や腎周囲組織など)に寄生する。
下図はミクロフィラリア
〜感染経路〜
○バンクロフト糸状虫
イエカ・ヤブカ属の経皮感染。(第3期幼虫が皮膚から進入)
→リンパ管からリンパ節へ移行し6〜12ヶ月後にmfを産出
○回旋糸状虫
ブユの経皮感染。(同様に第3期幼虫が皮膚から進入)
→皮下に寄生し成熟し、mfを産出するには、約一年間を要する。
ミクロフィラリアが目に移動することもある。
回旋糸状虫および常在糸状虫のmfは無鞘であるがロア糸状虫のmfは有鞘。
回旋糸状虫のmfは皮膚から検出されるが、常在およびロア糸状虫のmfは抹消血中に見出される。
大きさは回旋糸状虫のmfが約300μm強、常在糸状虫のmfは小型で約200μm、ロア糸状虫のmfは300μm弱である。